個人的「名盤」の話
今回は、自分が何度も何度も聴いてきたアルバムについて書く。
普段は基本的に新しいものを求めて音楽を聴いているが、好きな曲聴きたい期に入ったときに必ずといっていいほど再生するアルバムがいくつかある。
ただ、ここで選定基準を設けておきたい。
①1アーティスト1アルバム
②シングルは除く。
③Wake Up, Girls!は除く。
今回はなるべく複数のアーティストをアルバム単位で取り上げたいので①②のルールを適用。
言うまでもないが、あくまで自分個人の意見、解釈で選定し、書く。
③は私情。WUGちゃんは自分にとって殿堂入りもはや神なのでその座は揺るぎません。
崇拝崇拝。
「2012」/Acid Black Cherry
iTunesでは配信されていなかった。
V系ロックバンド「Acid Black Cherry」の3rdアルバム。
このアルバムは「生きる」がコンセプトになっており、人の「生死」や「不幸」について歌われている曲が多い印象。
ただ、ひたすら暗いわけではないので安心してほしい。
曲調はハードロックからバラードまで多様。とはいえジャンルがジャンルだからロックテイストは多め。
絶望に向き合いつつ、「背中を押す」のではなく「切り裂く」というイメージのエールが感じ取れる。
おすすめポイントは2つ。
ひとつめは、Vocal.yasuの圧倒的な歌唱力。
界隈にもファンが多く、現在活動休止となっているが、復活を望む声がいつまでもやまない。疾走感のある曲も、雄大なバラードも、V系ならではの煽情的な曲も、何を歌っても「似合う」。一度その歌声を聴いてみてほしい。
自分がABCと出会ったのはこの曲がきっかけだった。
ある意味V系らしくない壮大で純粋なラブバラード。
MVと合わせて聴くと組み上げられたストーリー性に感動を禁じ得ない。
是非ご一聴を。
その他にもめちゃくちゃかっこいい曲揃いだから、どれもおすすめしたくなる。
M&W/シド
奇しくも連続のV系アーティストだが、たまたまである。
「シド」といえば、アニソン界隈では「鋼の錬金術師」主題歌の「嘘」や「レイン」、「マギ」主題歌の「V.I.P」などが有名だろうか。
そのイメージはこのアルバムには合わないかもしれない。
自分がこのアルバムを聴くときに感じるのは、「正気」と「狂気」。
「冬のベンチ」や「Cafe de Bossa」などの曲は、純情、純愛、まっすぐな気持ち、不器用な恋愛、そんなイメージの「正気」の部類。
「正気」に分類される曲はまっすぐに思いを語る歌詞が多く、その表現は曲中の人物に寄り添った言葉選びが感じられる。
反対に「ゴーストアパートメント」や「S」などの曲は、報われない思い、結ばれない恋、淫靡な雰囲気、不器用さ故の曲がった愛情、そんなイメージの「狂気」の部類。
「狂気」に分類される曲は、曲中の人物の思いが乗せられてはいるものの、どこか遊びが感じられる表現が多い。言うなれば道化士。
「正気」と「狂気」が織りなす新感覚のエンターテインメントとして、是非曲順通りの再生をして、「シド」というアーティストが持つ繊細な感性や言葉遊びを体感してもらいたい。
MONSTERS/夏と彗星
彗星の如く現れた若き才能。と言われるのも納得。
ニコニコ動画出身の歌い手「夏代孝明」によるトータルプロデュースのソロプロジェクト「夏と彗星」。
80~90年代カルチャーから影響を受け、それを独自解釈した結果、昨今のシティポップリバイバルからは絶妙に逸脱した作品になっているそう。
自分の感想としては、このアルバムの魅力は中毒性と楽曲全体の雰囲気、そしてこだわりを感じる音使い。
まずなんといっても、どの曲も中毒性がすごい。
特に「City」や「誰でもないモンスター」はそのまま無限リピートされても聴き疲れしないような感がある。
そして、全曲共通して「おしゃれな音楽」だ。
夜のドライブで聴いていたくなるようなかっこよさがある。
そして、こだわりを感じる音使い。
特に「ハル」という楽曲。
この曲は以前「楽曲10選の話」でも取り上げた。
https://naginagi-wugwug.hatenablog.com/entry/2020/06/30/034701
「Dareharu」という最近韓国で大人気なクリエイターを楽曲制作に招いて作られていて、その音作りは圧巻。細かい部分まで作りこまれているので、スピーカーではなく、ヘッドホン等、音を直接感じ取れる環境での再生をおすすめする。
ユートピアだより/学園祭学園
鷲崎健さんの後輩兼TOの青木佑磨さんがボーカルを務めるバンド「学園祭学園」。
このアルバムの魅力は何といっても「優しさ」。
まず、耳に優しい。
ロックバンドが大好きだという人にとっては退屈に感じるかもしれないが、どの曲も突き刺さるような音の強さは全くないし、ボーカルも尖ってなくてとても聴き心地が良い。
そして、歌詞が優しい。
優しさというより温もりというべきか。
印象的なのは「コーダ」と「リビング」。
「リビング」は先ほどの「ハル」と同様、以前「楽曲10選の話」で取り上げた。
鬱陶しいのでリンクは貼らない。
「コーダ」のラスサビにある歌詞がとても温かくてお気に入り。
鍋を温め直して
25時にふたり啜っている
だらしなく太り腹はたるむ
いつか向こうで笑っていて
その時まで手は繋いでいる
笑うようにふたりは老けてゆく
パートナーとの良い関係を感じさせる歌詞。
こんな関係を作れたら幸せだろうなぁといつも思う。
「リビング」は以前も語ったが、大切な誰かの温かさを感じ取れてとても好き。
それは家族かもしれないし、恋人かもしれないし、友人かもしれない。
MVのように、友人同士の楽しげな晩餐を見ているのも幸せな気持ちになれる。
このアルバムは、眠れない夜に聴くのが好き。
コーヒーやココアを淹れて静かに曲を楽しむ時間はとても心地良かった。
212/nameless×とあ
HP
http://www.subcul-rise.jp/nameless_toa/212/
ニコニコ動画出身の歌い手「nameless」さんとボカロPの「とあ」さんの共作アルバム。
とあさんの曲の特徴はなんといっても透明感。
特におすすめの曲は「てをつないだらさようなら」と「ツギハギスタッカート」。
namelessちゃんのきれいで透き通った歌声が曲にとても合っていると思う。
透明感のある女の子って、芸術としてとても好きなので、この歌ってみたを初めて聴いたときは衝撃を受けた。
続いて、とあさんの可愛い曲。
透明感があって少し不思議な世界観を作るクリエイターさんかと思ったら、しっかり可愛い曲も作れてしまう。
おすすめは「恋の才能」と「アイシテ」。
曲が可愛い上にnamelessちゃんも可愛い。
最強に可愛いが、やはりどこか不思議な少女感が漂うのはとあさんのセンスなのだろう。でもそんな不思議さがアルバム全体の雰囲気に合っていて、世界観を損ねていないのがすごい。
このアルバムは最推し。
自分が個人的に好きな、透明感、不思議な世界観、可愛さを備えている上に、聴き疲れしないことも高評価。スッと耳に入ってくるボーカルなので眠れない夜や憂鬱な朝にちょうどいい。
また、このアルバムには仕掛けがあって、一番最後に「~regret~」というタイトルのインストが存在する。暫しの静寂を経て、namelessちゃんの語りで、ゆっくり穴に沈んでいく感覚に陥った後、1曲目の「リグレット」に戻る。こうして没入感が生まれ、どんどんこの作品の世界観に引きずり込まれてしまう。
まさに聴けば聴くほど楽しめるアルバム。
サブスクでの配信がないので聴くのが難しいかもしれないが、心からおすすめできる「名盤」なので是非一聴してほしい。
以上、自分が思う名盤の話でした。